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生体-機械融合システム
研究の目的

昆虫の一部の機能を機械で代替することで、高い環境適応性を示す昆虫の神経系の機能に焦点をあてた研究手法を確立する。 「環境適応的」とわれわれが判断する根拠は、刻々と変化する環境情報(入力)に対して、 出力情報が変化し、それによってもたらされる機能、 例えば生物の行動が生存や子孫の繁栄に役立つことにある。 しかし、従来の神経科学では、そのごく一部の機能や回路に注目し、 そこから全体機能の推測をしているに過ぎない。 逆にいわゆる「生物を規範とした」ロボットでは、 入出力情報を模倣した系の構築にとどまっている。 この「生体―機械融合システム」では、昆虫の神経、筋肉、行動といった さまざまな生体情報を抽出し、ロボットや機械を操作することで、 感覚フィードバック(環境情報)によって変化する生体情報の変化をリアルタイムにとらえ、 昆虫の持つ環境適応性の機能に迫ることを目指す。


小型ロボットによる神経回路モデルの検証
   

神経生理学によって明らかになった神経回路を基に、カイコガの定型行動をロボットで検証した。 大きさは長さ30mm、幅28mm、高さ31mmと、実際のカイコガ成虫とほぼ同じ大きさである。 フェロモンセンサとして実際のカイコガから切り出した触角を用い、ロボット前面の左右に配置している。 触角のフェロモン受容により発生した電位(触角電図:EAG)は、コンピュータへ転送され、 神経回路・神経伝達物質・左右の受容タイミングに基づく計算モデルからフリップフロップ信号を形成し、 ロボット左右のモータの駆動信号を再びロボットへ送信する。 実際にフェロモンプルームの中で動作を検証したところ、 カイコガと同様の行動パターンを繰り返してフェロモン源に到達することができた。
 
フェロモン源探索ロボット
   



昆虫操縦型ロボット
   
歩行運動をボールの回転によって計測し、モータを制御することで、 カイコガの運動を移動ロボットの運動として完全に代行したロボットを試作しました。 昆虫の運動に対するモータのゲインを操作することで、「不自然な」環境を作り出し、 それに対する昆虫の適応性を分析することができます。さらに、高い環境適応性をもつ「昆虫ロボット」の目指す姿として、 昆虫脳の制御システムとしての能力の評価手法としても期待できます。
 
昆虫操縦型ロボット
   



昆虫脳操縦型ロボットの構築
   
雄カイコガ(Bombyx mori)は雌のフェロモンを触角で受容すると、 直進歩行、ジグザグターン、回転歩行からなる定型的行動パターンを発現して雌に定位する。 この定位行動の背景にある、脳内の情報の入出力経路については、 これまで、分子遺伝学、生理学、行動学といった分野から要素分析的に調べられていて、 そのモデル化が試みられている。このようなモデルの機能を検証するために、 生物学的な身体機能を果たすロボットの部分を共通として、 そこに実際の脳を入れ込んだ生物‐機械融合の実験系との比較を行う必要がある。 しかし、生物‐機械融合の実験系は未だ組まれていない。 本研究は昆虫脳の行動に対するコントローラとしての機能を評価するための、 生物‐機械融合実験系を構築することを目的とする。
 
昆虫脳操縦型ロボット
   



昆虫模倣の匂い源探索ロボット
   

成虫のカイコガのオスはメスの出すフェロモンを数km先からでも感知し、そのフェロモン源を探し出す行動を取る。 直進性のある光や音が直接飛び込んでくる視覚や聴覚を使った位置の特定の場合と異なり、 フェロモンなどの風にのって拡散していく匂い粒子を媒介とする嗅覚を用いた位置の特定では、 風向きや匂いの強さと言った情報から間接的に類推していかなくてはならない。 成虫のカイコガは餌をとらないため、限られたエネルギーを有効に利用したアルゴリズムでこうした匂い源探索を行なっている。 ロボットに匂いを検知するセンサーを取り付け、カイコガの匂い探索行動を行なわせることによりそのアルゴリズムを検証する。 またカイコガのような匂い源探索行動を実装したロボットが出来れば、様々な産業で応用可能である。
 
   



昆虫規範衝突回避モデルの作製
   

昆虫の複眼による情報処理と行動発現は,シンプルかつ頑強であり, 工学的な応用が期待される.本研究では,クロマルハナバチを用いた行動解析を行っている. トルクメータに固定したハチに対し,600 Hz以上の動画表示が可能なデジタルマイクロミラーデバイスを視覚刺激として用い, 羽ばたき運動を小型マイクで計測した. 実験結果から行動解析し,昆虫の視覚情報による昆虫規範衝突回避モデルを作製する.
 
構築した閉ループ系
   



閉ループ系における
昆虫の行動・感覚情報統合アルゴリズムの研究
   
 昆虫に与える視覚刺激・嗅覚刺激を任意に操作でき, その視覚刺激を昆虫の行動と関連づけた閉ループ実験系を構築し,行動実験でカイコガの定位行動を解析した. また,定位行動の解析では,行動実験結果を基に, シミュレーションで嗅覚情報と視覚情報を統合した定位行動モデルを作成した. 嗅覚情報に応じて視覚情報処理を変化させることで,定位能力が向上することが示唆された.
 
   



超小型テレメトリによる昆虫の飛行システムの研究
 

 

大空を自由に飛び回ることのできる昆虫の飛行システムについて, 自由飛行実験を中心に行動学的,生理学的に明らかにします. 図は腹部に送信機を取り付けたスズメガと,自由飛行中に遠隔計測した飛翔筋の筋電位です.

多様な感覚情報とフィードパックを含む、完全な閉ループ系の飛翔筋電位計測を行った。 0.25-0.42g、2-4チャンネルの超小型送信機を開発し、スズメが(体重1g)に装着した。 揚力の発生や飛行針路、姿勢を表す特徴的な飛翔筋電位の活動パターンが多数観察された。


 
超小型テレメトリによる飛行中の筋電位計測
   



Study on active controls of
free flight maneuvers in insects
   

By combining optical triangulation with the comb-fringe technique and dual-channel telemetry, wing kinematics and body attitudes accompanying muscle activities of free-flying insects can be recorded simultaneously when they performed flight maneuvers. The optical measuring system can disclose brisk variations in wing kinematics which may lead to an efficient maneuver during free flight. The synchronous analyses of wing kinematics and electromyogram will show how flight muscles modulate wing kinematics actively and then affect maneuvers consequently.
 
   



多機能遠隔計測技術の開発
   
感覚入力から行動発現までを支配する神経系の機能を知るためには、その系に対する入出力情報を捉えることが重要である。 自由行動下で任意の神経系に対して電気刺激を行い、それに対する応答、 さらには行動の変化を同時に捉えることで、神経系の機能を明らかにすることができる。 開発した計測装置は0.4g、刺激装置は0.1gで、神経束への刺激・計測が可能である。 また、電源は電磁誘導によって生じる誘導起電力によって生じるため、電池の交換は不要である。
 
遠隔刺激・計測装置
   

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